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ホメオパシー獣医師向け講座 第14回 |
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Pulsatilla(野生のアネモネ)は、Aconite, Cimicifuga, Helleborous, Hydrastis, Paeonia, Staphisagriaなどと同様にキンポウゲ科オキナグサ属の多年生植物で、もともとはスカンジナビア半島、デンマーク、ドイツ、ロシアと涼しい地方が原産でしたが、今は北半球を中心に広く分布しています。一般名はsmall pasqueflower, meadow anemoneといいます。この名は、花が復活祭の時期(古語でPaschという)に咲くことに由来します。日本ではアネモネ、セイヨウオキナグサという名が一般的です。オキナグサの名は全身が白い柔らかい毛に覆われていることと、長く伸びた種子の毛が老人の白髪に似ているのでその名がつけられたといわれています。 花は3月から5月にかけて咲き、濃い紫色の花びらを持ち、きれいな黄色のめしべを持っています。時に9月に再び花が咲くこともありますが、そのときも群生して咲きます。 この花は古くは紀元1世紀のギリシャで目の治療に使用された記録があり、18世紀にはヨーロッパで白内障や潰瘍などの治療に用いられた記録もあります。 ローマ神話では、美と愛の女神ビーナスが流した涙からアネモネが生まれたと伝えられています。またギリシャ神話では、女神フローラの嫉妬によってアネモネの花にされてしまい、愛するゼピュロスに見捨てられたといいます。アネモネの花の蕾がうなだれているのは、そのせいだと言われています。そのため感情的で情愛深く涙もろい時のレメディーとして非常によく使われます。そして見捨てられたという感情に対しての非常に有用なレメディーになります。 またアネモネはwind flowerとも呼び(aneomosは、ギリシャ語で風)、風に吹かれるまま揺れ動きながら成長していきます。強い風によってひどく曲げられても茎の芯は強く柔軟性があるので折れることはありません。このためPulsatillaの人は、見た目は可憐で傷つき易そうですが、非常に柔軟性があり芯は強いです。が、風に吹かれて揺れるように、優柔不断でもあります。この性格から、様々なものに影響されやすい面を持っています。身体症状もゆらゆらと変化することがあります。 そして必ず群生して生育しいっせいに花を咲かせます。これもレメディーの特徴通り、人に抱きしめられているのが好きで、また人に依存しやすいという特徴がありますPulsatillaの子供は何かあって泣いても、抱きしめられると安心します。 アネモネは雨の少ない白亜土壌で生育しますが、Pulsatillaタイプの人もあまり水を欲しがりません。アネモネの生育には涼しく新鮮な空気を好みますが、これもそのままPulsatillaの特徴になっています。 この植物は移植を嫌いますが、このタイプも引越しを嫌います。 花の色は濃い紫色ですが、それと同じ色の静脈うっ血に対するよいレメディーでもあります。 メディカルハーブとしてのこの植物は、精神を安定させ、活力を与えるために精神的な消耗に使われていました。出産前後の強壮剤としてや心の状態の手助けにも使用されていました。また生殖器関連の炎症や痛みを和らげる作用ももっています。感染症や呼吸器消化器系のカタル性炎症にも使われています。これらの有効成分の一部は、下記に示してあります。 Pulsatillaは、1805年にハーネマンによって、レメディーとして紹介されました。(Materia Medica pure第二巻)レメディーには根を含む植物全体が使われます。 このレメディーのマザーティンクチャーには、glycosideやranunculinが含まれており、ranunculinは、酵素加水分解されて抗菌作用などがあるprotoanemoninに変化します。それからanemoninに変わります。このanemoninは、鎮痙作用を持ち、咳を鎮めたり、消化管の痙攣や尿路系の痛みを抑えます。また他にもanemoninには、神経痛や偏頭痛を抑えたり、カタル性の炎症を抑え、月経を促進させたり、精神を安定させる作用などが証明されています。 Pulsatillaタイプの特徴は、感情的で情愛深く涙もろく、人に依存しやすく、抱きしめられるのが好きです。愛する人、安心できる人に抱きしめられていると、心が和らぎます。一人になることを恐れ、相手にいつも一緒にいて欲しいので、相手を喜ばせるためには、どんなことでもします。それが叶わないとシクシクとよく泣きます。一時的に強い嫉妬心を示すこともあります。こういった傾向から、何か一つのことを信じるとかたくなにそれを守り通そうとします。それが進行すると固定観念が強くなります。 基本的に優しくて順応性がありますが、優柔不断でもあり、気分が変わりやすい面を持っています。シクシク泣いていたかと思うと、急にイライラするようなこともあります。このイライラは、Pulsatillaタイプには似合わないような状態ですが、根底の優しさは残っています。 そして、デリケートで恥ずかしがり屋なので、知らない人にはやや人見知りをすることがあります。やや臆病な面もありますが、芯は強くしっかりとしています。 涼しく新鮮な空気を好みます。 このレメディー体質は女性、子供に多いようです。男の子の場合には、大抵6-10才までに他の体質が加わってしまいます。 寝るときにうつ伏せに寝たり、仰向けで両手を頭の上に上げるポーズで寝ます。足に熱がいくので、布団から足先をはみ出す傾向があります。 引越しなどの環境の変化に神経質です。 食べ物は、甘いものやアイスクリームのような冷たい物、乳製品が好きですが、脂っこい物、スパイシーな物は嫌いです。バターは大好きか大嫌いかのどっちかになります。季節の旬の食べ物も好きです。喉は渇きません。特に発熱している時には水分をあまり取りません。 Pulsatillaの影響が強い部分は、精神、静脈、粘膜, 女性ホルモン関連で、右側が優勢です。体質があっていれば、非常に多くの疾患に対して使われます。 一般的な典型的に付随する症状 ○分泌物が緑黄色の時 ○誰かそばにいると症状が和らぐ。 ○痛みや病気が変化する。(例;痛い部位が変わる関節炎など) ○体質が合えば、あらゆる症状に。 主な臨床適応は次の通りです。 ○ 呼吸器疾患 急性慢性鼻感冒;特に味覚や嗅覚が鈍くなる傾向があります。鼻は乾いて、夜になると詰ります。朝から日中にかけては鼻汁が出ます。暖かい部屋で症状は悪化し、涼しい外気で改善します。 花粉症、アレルギー性鼻炎、上部気道感染症 喘息 再発性鼻咽頭炎 再発性気管支炎、カタル性気管支炎 呼吸困難 ○ 消化器系疾患 消化不良、脂っこい食事やケーキ、アイスクリームなどの食後の胃の不調(それでもアイスクリームは好き)。喉が乾きません。 便秘や下痢、おならによる腹部の疝痛など ○泌尿生殖器系;女性生殖器系のほとんどの諸問題に対して使用されます。 生理中の不調、生理不順、黒色がかった生理血、帯下 月経前症候群 月経困難症 無月経 不正子宮出血 子宮内膜症 子宮脱 悪阻 乳漏症、乳腺炎、乳房線維嚢胞病 膀胱炎;排尿の最後に痛みがあります。排尿を途中で止めようとすると悪化します。 腎盂腎炎 尿失禁;妊娠中におこりやすくなります。発咳の時にも起こります。 前立腺肥大、精巣炎 ○ 静脈 静脈の鬱血性病変 静脈瘤(Hamamelis etc.)、静脈瘤性潰瘍、静脈炎による後遺症 凍瘡(Agaricus,Tuberculinum) ○ 神経系 敏感に落ち込んでしまう状態 頭痛、偏頭痛;生理の終わり頃によく起こります。熱、太陽、ストレス等で悪化します。涼しい環境、冷湿布、患部の圧迫で楽になります。吐き気を伴なうことがあります。 眩暈;上を見上げると悪化します。生理中に悪化し、横になると改善します。 顔面神経痛 歯痛;冷たいと楽です。熱と温かい食事で痛みが悪化します。 背中の痛み;背中に冷たい水を注ぐような感覚を感じることもあります。 関節炎;痛みのある場所が変わります。初めの動きは痛みがありますが、動き出すと楽になります。 痛みは温めると悪化し、冷湿布で改善します。 ○ 感覚器 結膜炎、眼瞼炎;緑黄色の眼ヤニが出ます。眼瞼が痒く、涙が出てきます。眼が痛いことがあり、症状は冷湿布で改善します。 涙管閉塞;若齢。 上瞼の麦粒腫 化膿性外耳炎、中耳炎;耳から分泌物が出ることがあります。耳の痛みは、夜や温まると悪化します。 ○ その他 皮膚病;麻疹による皮膚病変、暖めると悪化する凍傷の痒み、蕁麻疹、乾癬、湿疹 感染症;流行性耳下腺炎(おたふく風邪)、麻疹、水疱瘡 好転する要因は、涼しい新鮮な空気、動き続けること、同情や慰め。 悪化する要因としては、暑さ、寝室の暑さ、休息、動き始め、夜、月経前と月経中、思春期、妊娠中など。 Calc.carbタイプからPulsatillaへ移行することがあります。 Pulsatillaは中年以降にGraphitesやSepiaが必要になることがあります。 Silicaは、しばしばPulsatillaの慢性型と言われています。 Antidotesには、Chamomilla, Coffea, Ignatia, Nux vomicaなどがあります。 またPulsatillaは、Sulpherのオーバーリアクションに対するantidotesにも使われます。 Compatible; Arsenicum alb., Bryonia,. Belladonna.、Ignatia. Kali-bich, Lycopodium, Nux-vomica, Phosphorus, Rhus-tox, Sepia, Sulphur Complementary; Allium cepa, Coffea, Chamomilla, Nux-vomica, Penthorum, Silica, Copyright@Morii |
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