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ホメオパシー獣医師向け講座 第125回 |
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Ambra griseaは、 Physeter属マッコウクジラ(Physeter macrocephalus)の腸内、特に盲腸部にできる結石様分泌物のことです。一般的に龍涎香と呼ばれています。龍涎香(アンバーグリス)は、麝香と並び古くから香料中の至宝とされてきました。龍涎香は、マッコウクジラの体内から排出されて静かに海上を漂っていたり、波打ち際に漂着したものが時に発見される、またあるいは死んだマッコウクジラが海岸に打ち上げられた場合に採取するといいますが、非常に高価なものとされています。かつては捕鯨の際、鯨の解体中に採取されていましたが、1987年3月をもって商業捕鯨は禁止されて以来、この方法による採取は困難となりました。 龍涎香は、おもに蝋状の塊で、小さなものでは1キログラムから、巨大なもので100キログラムと、その重さ、形は様々です。そのままでは生臭くてとても芳香とはいえませんが、乾燥させて乳糖を加え、微量をアルコールに浸して燃やすと、温和で高尚な香りがします。その香りは抹香というモクレン科のシキミの葉を粉にして作ったお香に似ています。日本語のマッコウクジラの由来は、このクジラから取れる龍涎香の香りが抹香のものに似ているからです。 龍涎香は無光沢な蝋状のかたまりで、色は黄色味を帯びた灰色、灰色、黒色などのものがあります。それぞれgolden、grey、black等の等級がつけられており、灰色、あるいはマッコウクジラの腸内から採取した黒色で柔らかいものは、品質が劣るとされています。他の動物性香料と違い、排泄物臭や刺激臭がありません。長期間海上を浮遊した、黄金色を帯びているものが最高級品とされています。龍涎香の主成分である無臭で非揮発性の白色固体アンブレインは、酸化すると芳香を放ちます。そのため、長期間海上を浮遊したもののほうが、酸化が進んでいるので高品質になります。海上を浮遊しているうちに強い陽射しや空気、海水に晒されてゆっくりと性状が変化していきます。英語名のAmberは、アラビア語のアンバールに由来し、その後この龍涎香に似た琥珀もアンバーと呼ばれるようになりました。 龍涎香は、麝香と並び古くから貴重な香料として香水や高級化粧品に使われてきた他に、薬効があり、カタルや神経症に効き、刺激剤であり、とくに媚薬として用いられてきました。 龍涎香の主成分はアンブレインですが、これが酸化分解されてできるアンブロキサンやアンブリノールが香りの本体です。他にも、エピコプロステロールや安息香酸、コレステロール、ジヒドロコレステロール、各種ミネラルなどが含まれています。 Ambra griseaは、ハーネマンによってホメオパシーに導入されました(Materia Medica Pura第六巻)。 Ambra griseaの臨床適用は、主に精神や感情に対する疾患に適用され、次のようなものになります。特に若齢者や高齢者にはよく使用されます。また、貧血や睡眠不足に加えて過労や高齢などで体力が弱っている場合にもよく反応します。 ○ 精神、神経系 ○ 呼吸器循環器系 ○ 消化器系
○ その他
好転する要因は、マッコウクジラのように外気の元でのゆっくりとした動き、冷たい飲物などです。 Antidoted by; Camphora, Coffea, Nux-vomica, Pulsatilla, Staphysagria. |
(参考)マッコウクジラ マッコウクジラは、ハクジラ類の中で一番大きなクジラです。性別によって体長に大きく差が見られる種類で、体重でいうと雌は雄のほぼ半分しかありません。最大のもので、雄は約18メートル、体重約57トン、雌は約13メートルで体重約40トンにもなります。色は、背中は黒色または灰褐色ですが、年齢と共に白色化し特に頭部が先に白色化します。腹部は、灰色か白色です。頭部が大きく成熟した雄では体長の3分の1に達する個体もあります。マッコウクジラのからだには数々の傷で白い斑模様が見られますが、その中にはマッコウクジラらしい、イカの吸盤による傷もあります。 属名Physeterは噴水という意味があり、頭部上の左先端にある噴気孔から力強く高さ5mも吹き上げることに由来しています。英名のマッコウクジラの頭部にある乳液状の脳油が精液(sperm)に似ていることからsperm whaleと呼ばれています。この脳油は、音波を発射する際のレンズの役目と、浮力を調節する役目を果たしています。日本では、龍涎香の香りにちなんでマッコウクジラと呼ばれるようになりました。 赤道から極海まで、世界中のすべての沖合い海洋に出現しています。このマッコウクジラが他の種と違うところは、雄と雌の分布が極端に違うところだそうです。雄は熱帯から極海まで、広い範囲の水温に耐え分布しますが、雌と子供たちは表面水温が15℃以上の海域にとどまっているそうです。それを裏付けるように、1948年以後アイスランド沖で2000頭以上のマッコウクジラが捕獲されましたが、その中には一頭の雌もいなかったそうです。 マッコウクジラの大好物はとてもよく知られているとおり、イカ類です。その中には巨大なダイオウイカも入っています。これらは大抵深海400m以深の中層で採食しているそうです。そのほかの餌生物としてはエイ、サメ、アンコウ、タラ、メヌケなどがあります。マッコウクジラは一年中、昼も夜も採食し、一日に体重の3〜3.5%の量(成熟した雄であれば、約1.5t)の食物を食べると推定されています。 マッコウクジラは繁殖率が低く、3-5年に1回15ヶ月前後の妊娠期間を経て、体長4m前後の子供を一頭産みます。1.6〜3.5年間授乳します。子供は産まれてから1年以内に固形の食物を食べられるようになりますが、それからしばらくしないと歯が揃わないようです。性成熟は雌で平均7-13歳で体長約9m、雄で10-30歳、体長約14mだそうです。このように雄の成長が遅れるのは、一夫多妻性の1つの特徴です。その後、雄の成長は35〜60歳まで続くそうです。 基本的な社会単位は、母系的な群行動をとり、ふつう10〜40頭で構成されている家族群であると考えられています。この家族構成の内容は雌と両性の未成熟個体であるといいます。雄はある程度成長すると、雄だけの群にはいり、最終的には緯度の高い海域で単独で回遊するそうです。交尾期には成熟した雄は低緯度の繁殖海域に戻り、群れに参加します。しかし、留まる期間は極めて短期間です。 マッコウクジラはその潜水能力において、クジラ類のなかでは最も深く、長く潜水できるクジラです。水深3,200mの地点で底生魚を捕食していたという間接的な証拠もあります。1回の潜水時間は20〜50分、最高1時間半におよぶこともあります。眼は真横しか見えず、イルカと同じように、高周波のクリック音をソナー代わりに使用しています。その波長は0.2〜32kHzで、長さ0.002〜0.03秒の音を0.01〜10秒間隔で発するほか、低いうなり声も出します。また、個体ごとに特徴的なパターンでクリック音を繰り返すコーダというサインで、仲間と連絡を取り合っているようです。 この声はいろいろなCDになって発売されています。 18世紀初めから北大西洋で開始されたクジラ漁で、マッコウクジラは、この脳油と厚い脂肪層から採れる油脂と竜涎香の採取のために乱獲されてきました。 |
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